とある水夫の会話、という想像
_…歌?
ああそうだ。なんでもその船からは、この世のものとは思えないほどの美しい歌が聞こえてくるそうだぜ
_…別に、海賊船から歌が聞こえることは不思議でも何でもない。どうせどっかの港から歌姫をかっ拐って、酒でも飲みながらドンチャンやってんだろ
まぁ聞けって!ただの歌じゃねえんだよ。曰く付きさ。恐ろしい、海の伝説…魔性の歌さ
_魔性の歌?
ああ、噂くらい聞いたことあるだろ?その美しい歌声に心を奪われた船乗りは、歌の主を探しに海に飛び込んじまう。我を忘れてな。そうやって飛び込んだ連中はみんな、そのまま沈んだっきり帰ってこない
_…おい、お前それって
ああそうだ、“人魚”だよ
_海賊船から“人魚の歌”が…?なんだよそれ、どうなってんだ。なんで海賊船に人魚が乗ってんだよ?
俺だって詳しいことは分からない。ただ、その歌を聞いたって奴は何人もいる。仲間の船もいくつかやられたって話だ。
_……“やられた”?その船、他の船を襲うのか
どうもそうらしい。ほら、この間あの…何とかって大悪党の船が海軍とやりあって沈められたって、あったろ?あの海戦の最中に、この世のものとは思えない「歌声」を聞いたって奴が居たんだ。悲しい歌声を響かせながら哀れな男どもを海に引きずり込む…“人魚の海賊船”は実在するんだ、多分な
なんだよそれ…人魚が海賊やってるってのか
_噂じゃ死んでった海賊たちの祟りだって話だぜ。俺達も気を付けなきゃな
……。